KPMの蓋付壺です。
過去の芸術様式への懐古と模倣が終わりを迎え、新たな創造表現の模索が始まった時代。ドイツのKPMでも、滑らかな曲線の繰り返しや、自然をモチーフにした草花の様式化などがトレンドとなり、それと同時に新たに開発された技法や、釉薬のバリエーションによって次々と斬新な作品が発表されました。
販売の蓋付壺は、濃紺とグレーの釉薬を二層で使うことにより、焼成によってひびの入ったようなまだら模様が現れる技法をベースに用いています。ジャポニズムの影響がみられる桜の図案は、花びらを濃淡あるエナメルの盛り上げで情緒的に描き、立体感のある重厚な金彩で枝の質感を表現、葉は細筆で一つ一つ丁寧に薄く描くことで奥行きのある仕上がりになっています。
一方、蓋や本体下方の装飾には、簡素化された花のモチーフと様式的な模様の繰り返しを取り入れており、メインの図案の桜とは対照的です。つややかで透明感のある赤、ターコイズ、琥珀色などのエナメルが、小さな宝石のように整然と並び、崩れることなく最大限まで盛り上げられたまま焼成に成功した技術の高さがうかがえます。一つの作品の中に多岐にわたる技術とデザインの豊かさが濃縮された、ユーゲントシュテール期KPMの逸品と言えるでしょう。
品番 / Ref No.
CN19-KPM65
状態 / Condition
ダメージや修理箇所等のない大変良い状態です。
年代・裏印 / Backstamp
1900年頃 染付セプター印、朱色宝珠KPM、数字またはアルファベットの刻印
サイズ / Size (cm)
高さ約17.8㎝
価格 / Price
ご売約済み/Sold